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help リーダーに追加 RSS 二次創作小説【花より男子-長編-第16章】

<<   作成日時 : 2008/07/24 20:02   >>

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  【 アイツといれば 】





土曜日、俺はアイツを、車で迎えに行った。

昨日、いやあれから俺は、やけに気分が高揚していて、何となく落ち着かない。

金で買えないもの、それを見に行く事は、正直な所、俺の中では二の次で。

ただ、あの日の最後に見た、アイツの笑顔だけが、俺の心を支配していた。

一人でドキドキしていたけど、アイツは家の前で、俺を散々待たせやがった。

全く、相変わらず腹が立つ。

でも、ごめん、と出てきた、アイツの顔は、今迄のそれとは違って、俺に心を許した、至って自然な表情。

その顔を向けられているのが、嬉しくて仕方なくて、待たされた事すら忘れて、俺の気分は一気に上昇する。

何を根拠に、今日の行き先を決めたのか、てんで分からなかったけれど、富士山頂の夕日を見るんだって、一人ではしゃいでいる、アイツ。

何だそれ、今時、そんな地味な事すんのかよ。

心底そう思っているけど、どこでもいいんだ。

アイツと一緒に、行けるのなら。


自分から言い出した癖に、早くもバテている、アイツ。

バカな奴だ。

富士山なんて、そんな簡単に、登れる山じゃね〜よ。

そんな事、俺でも分かる。

全く、何にも考えなしの、アイツ。

散々文句言ってやったけど、それでも俺は、その足を止めようとはしなかった。

見てやるよ。

お前がそんないい、って言うのなら。

騙されたと思って、一緒に行ってやる。


途中でバテて、徒歩が遅くなった、アイツ。

こうなる事は、最初から分かってたけど。

男と女。

身長差。

どれを取っても、コイツが先にバテる事は、当然だった。

別に作戦って訳じゃね〜よ。

だから行こうとしたんでもね〜し。

・・・・・・

分からね〜な。

五分五分かもしれね〜。

アイツの手を、取ってやる事。

前にも一度、アイツの手には触ってる。

あの時の感触は、今でも忘れてない。

守ってやりたくなるような、柔らかくて小さな手。

俺が女を守る、なんて、よくそんな発想が、生まれてきたものだ。

今迄の俺じゃあ、考えられね〜事で。

ただ、踏み入れなかっただけかもしれない。

男と女の間にある、そういうものに。

必要なかったし。

煩わしそうだったし。

でもコイツとは、偶々そうなっちまった。

って、結局の所、俺が仕掛けた事だったけど。


アイツは、酷く緊張した顔をして、俺が差し出した手を、見つめている。

最初はいい、とか言ってたけど、俺は引かなかった。

恐る恐る伸ばすその手は、小刻みに震えて見える。

気のせいか、分からなかったけれど、俺はその手を、グイと自分の方に、引き寄せた。

その後は、すぐに前を向いて、暫くの間、ずっと後ろを、振り向かなかった。

繋いだ部分から、発せられる、体温だけを、感じている。


それすらも、ままならなくなってきた、八合目付近。

距離的には大してなさそうだけれど、五合目から只管登ってきた、俺達に取っては、その先がキツイ。

アイツは息を切らしながら、必死で俺に手を引かれていたけれど、さすがにもう限界らしい。

辺りもすっかり暗くなって、アイツの表情は、不安げに変わっていた。

夕日なんて、もうとっくに沈んでるし。

情けね〜顔、しやがって。

でも、何故だかやけに、その顔が愛しくて。

今はアイツの不安を、取り除いてやりたい、それだけしか思っていなかった。

背中を差し出す俺に、平気と強がりを言うアイツを、俺は少し強く叱った。

促すように低く屈んで、アイツが乗ってくるのを、待つ。

遠慮がちに、俺の肩に、手を置いたアイツ。

その動きは、止まりそうな位に、スローモーションだった。

また、照れてるのか?

お前が照れると、こっちも照れるんだよ。

そう思ったけど、やっとの事、俺に体を預けたお前を、しっかり担ぎ上げて、俺は歩き出した。

さっきアイツが、辛そうにしている時に、近くにあった地図を見ていたから、少し先に山小屋があるのは、分かっていた。

その方向へ、歩みを続ける。

山登り難民の、緊急避難所らしい。

そこに着けば誰かしら居て、アイツの不安も取り除かれるだろう。

そこまで、俺も相当疲れていたけど、そんな事は言っていられなくて、必死で歩いていった。

こんな、七面倒臭い事をしたのは、いつぶりか。

何の為に歩いてるんだか、今はまだ分からないけれど、その時はただ、アイツの事しか、考えていなかった。







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