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【 アイツといれば 】 土曜日、俺はアイツを、車で迎えに行った。 昨日、いやあれから俺は、やけに気分が高揚していて、何となく落ち着かない。 金で買えないもの、それを見に行く事は、正直な所、俺の中では二の次で。 ただ、あの日の最後に見た、アイツの笑顔だけが、俺の心を支配していた。 一人でドキドキしていたけど、アイツは家の前で、俺を散々待たせやがった。 全く、相変わらず腹が立つ。 でも、ごめん、と出てきた、アイツの顔は、今迄のそれとは違って、俺に心を許した、至って自然な表情。 その顔を向けられているのが、嬉しくて仕方なくて、待たされた事すら忘れて、俺の気分は一気に上昇する。 何を根拠に、今日の行き先を決めたのか、てんで分からなかったけれど、富士山頂の夕日を見るんだって、一人ではしゃいでいる、アイツ。 何だそれ、今時、そんな地味な事すんのかよ。 心底そう思っているけど、どこでもいいんだ。 アイツと一緒に、行けるのなら。 自分から言い出した癖に、早くもバテている、アイツ。 バカな奴だ。 富士山なんて、そんな簡単に、登れる山じゃね〜よ。 そんな事、俺でも分かる。 全く、何にも考えなしの、アイツ。 散々文句言ってやったけど、それでも俺は、その足を止めようとはしなかった。 見てやるよ。 お前がそんないい、って言うのなら。 騙されたと思って、一緒に行ってやる。 途中でバテて、徒歩が遅くなった、アイツ。 こうなる事は、最初から分かってたけど。 男と女。 身長差。 どれを取っても、コイツが先にバテる事は、当然だった。 別に作戦って訳じゃね〜よ。 だから行こうとしたんでもね〜し。 ・・・・・・ 分からね〜な。 五分五分かもしれね〜。 アイツの手を、取ってやる事。 前にも一度、アイツの手には触ってる。 あの時の感触は、今でも忘れてない。 守ってやりたくなるような、柔らかくて小さな手。 俺が女を守る、なんて、よくそんな発想が、生まれてきたものだ。 今迄の俺じゃあ、考えられね〜事で。 ただ、踏み入れなかっただけかもしれない。 男と女の間にある、そういうものに。 必要なかったし。 煩わしそうだったし。 でもコイツとは、偶々そうなっちまった。 って、結局の所、俺が仕掛けた事だったけど。 アイツは、酷く緊張した顔をして、俺が差し出した手を、見つめている。 最初はいい、とか言ってたけど、俺は引かなかった。 恐る恐る伸ばすその手は、小刻みに震えて見える。 気のせいか、分からなかったけれど、俺はその手を、グイと自分の方に、引き寄せた。 その後は、すぐに前を向いて、暫くの間、ずっと後ろを、振り向かなかった。 繋いだ部分から、発せられる、体温だけを、感じている。 それすらも、ままならなくなってきた、八合目付近。 距離的には大してなさそうだけれど、五合目から只管登ってきた、俺達に取っては、その先がキツイ。 アイツは息を切らしながら、必死で俺に手を引かれていたけれど、さすがにもう限界らしい。 辺りもすっかり暗くなって、アイツの表情は、不安げに変わっていた。 夕日なんて、もうとっくに沈んでるし。 情けね〜顔、しやがって。 でも、何故だかやけに、その顔が愛しくて。 今はアイツの不安を、取り除いてやりたい、それだけしか思っていなかった。 背中を差し出す俺に、平気と強がりを言うアイツを、俺は少し強く叱った。 促すように低く屈んで、アイツが乗ってくるのを、待つ。 遠慮がちに、俺の肩に、手を置いたアイツ。 その動きは、止まりそうな位に、スローモーションだった。 また、照れてるのか? お前が照れると、こっちも照れるんだよ。 そう思ったけど、やっとの事、俺に体を預けたお前を、しっかり担ぎ上げて、俺は歩き出した。 さっきアイツが、辛そうにしている時に、近くにあった地図を見ていたから、少し先に山小屋があるのは、分かっていた。 その方向へ、歩みを続ける。 山登り難民の、緊急避難所らしい。 そこに着けば誰かしら居て、アイツの不安も取り除かれるだろう。 そこまで、俺も相当疲れていたけど、そんな事は言っていられなくて、必死で歩いていった。 こんな、七面倒臭い事をしたのは、いつぶりか。 何の為に歩いてるんだか、今はまだ分からないけれど、その時はただ、アイツの事しか、考えていなかった。 http://webclap.simplecgi.com/clap.php?id=mamag 続きが読みたい! と思ってくれましたら、こちらを押して拍手を送ってやって下さいませ。←前書きへ ←長編目次へ 二次創作小説【花より男子-長編-自覚】へは、 下にある( 《前記事 ・ TOPへ ・ 後記事》 )の、後記事》から進む事が出来ます。他作品をご覧になりたい場合は、 同じく下にある( 《前記事 ・ TOPへ ・ 後記事》の、TOPへから戻って、左サイドバーのテーマカテゴリより、ご希望の作品のテーマをクリックすると進む事が出来ます。 |
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