|
【 お金持ちデート 】 帰り道は二人とも、静かなものだった。 まるで言葉が、見つからない。 でも、それでいい、と思っていた。 この時のあたし達に、言葉は必要なかったから。 行きはあんなに苦労した道のりも、何故だか足取りが軽く感じられる。 心が開放されていて、歩く事を苦に思わない。 道明寺の放心が解けた時、あたしを振り向きながらも、アイツはまだ、ボンヤリした表情を、浮かべていた。 そんなアイツの手を、今度はあたしが取る。 ごく自然に、当たり前のように、あたしはアイツの手を取った。 今度はあたしが、アイツを助けているかのように、あたしはその手を、強く掴んで、離さなかった。 そうしてあたし達は、家に辿りつくまでの間も、ほとんど会話をしなかった。 あともう少しで、あたしの家に辿りつく頃に、道明寺が口を開く。 すげ〜ものを見せてもらった、って、普段の道明寺では、考えられない位、素直にそう言った。 そして、別れる寸前にアイツは、このお礼をさせてくれ、と言った。 自分には、お金を使う事しか、出来ないけれど、あたしが今迄、行きたくても行けなかった事、やりたくてもやれなかった事。 何でも叶えてやる、って。 今度は無理矢理、あちこち引っ張り回したりしないで、あたしの好きな所へ、あたしの好きな事を、何でも叶えてやる、って。 あたしは何だか、凄く嬉しくなって、頬を綻ばせながら、黙って頷いた。 本当に、別人になってしまったかのように、アイツの意識が変わっている。 その事が、手に取るように分かる。 それが何故だか嬉しくて、仕方なかった。 だからあたしは、黙って何度も頷いた。 連れて行って、そうはっきり、口にして。 夕日に染まった、アイツの顔は、何だか真っ赤になっているように、見えた―― あの日の約束通り、あたし達は次の週に、また約束していた。 今度は道明寺が、あたしの好きな所へ、連れて行ってくれるって。 どこに行こうか、迷ったけれど、七月の暑い盛り。 尚且つ、ゴージャスなプランとなれば、やはり、クルージングなんてどうかしら。 そう提案してみたら、何の事はない。 自家用のクルーザーが、あるんだって。 当たり前みたいに、そんなもんでいいのか、と言われて、何だか少し、複雑な気持ち。 でも、どんなに考えても、一介の庶民のあたしには、これ位の事しか、浮かんでこない。 これでも思いっ切り、贅沢なプラン。 大きなクルーザーに、たった二人で乗って、そこには、二人の為だけの料理人が付き、豪勢な昼食を作ってくれる。 食べ終わった頃に、船は小さな小島に辿りつき、何故あるのか、そこで待っていたリムジンで、島の中をグルリと回る。 たった一日で、しかも日帰りで、こんなに遠くまで、アッサリと来てしまい、何もかもが、贅沢の限りを尽くしていて、あたしの頭は、パンク寸前。 本当にコイツは、大金持ちの坊ちゃんなんだと、認識を新たにする。 分かっているつもりでいたのに、こうも目の当たりにすると、あたしは何でこんな人と、こんな所まで来てしまっているのだろう。 相変わらずその事には、現実味が沸いて来ない。 島から帰った後の夕食も、これまた豪勢で。 この前、無理矢理連れて行かれた時は、フレンチだったから、今度はイタリアンだそうで―― もうもう、一生出来ない贅沢を、その日一日で、経験させてもらった。 それなのに、まだ心残りはないか、と聞く道明寺。 どんなに知恵を絞っても、もう大した事は浮かんでこなかったけれど、一つだけ、ピンと来たものがあった。 ヘリコプター! 大声で叫んでみた。 だってあれって、十分で一万円とかするのよ。 庶民には相当、奮発するような贅沢なのよ。 それをアイツはまた、何だそんな事か、と言った。 その言葉に、ちょっとムッとするあたし。 自家用ヘリなんて、幾つもあるから、いつでも乗せてやれるけど、この辺りは夜景がキレイだから、まあいいかとアイツは、交渉しにいった。 戻ってきたアイツは、「一時間貸切にさせた」って―― 何でもかんでも、「道明寺だ」その一言で、全てすんなりと、話が通ってしまうらしい。 全く持って、今日のあたしには、驚く事ばかりが起こるけど。 お礼だって言ってくれているのだから、今日だけは思い切って、甘えてしまおうと思った。 その後見た、東京の夜景は、この前の大自然の美しさとは、違うけれど、正に宝石箱をひっくり返したような、見るも眩しい光景だった。 あたしはヘリの窓に、釘付けになる。 最後に、こんな素敵な思い出を作れて、あたしは本当に幸せだと思った。 そう思わず口にしたのだけれど、その時の道明寺の心境は、並々ならぬものだったらしい。 そんな事を思っているなんて、その時のあたしは、全く気がついていなかった。 http://webclap.simplecgi.com/clap.php?id=mamag 続きが読みたい! と思ってくれましたら、こちらを押して拍手を送ってやって下さいませ。←前書きへ ←長編目次へ 二次創作小説【花より男子-長編-全ての謎が解けた】へは、 下にある( 《前記事 ・ TOPへ ・ 後記事》 )の、後記事》から進む事が出来ます。他作品をご覧になりたい場合は、 同じく下にある( 《前記事 ・ TOPへ ・ 後記事》の、TOPへから戻って、左サイドバーのテーマカテゴリより、ご希望の作品のテーマをクリックすると進む事が出来ます。 |
| << 前記事(2008/06/30) | トップへ | 後記事(2008/07/07)>> |
| << 前記事(2008/06/30) | トップへ | 後記事(2008/07/07)>> |